「へくしっ・・・・・・、」
「!」
バイトに出ようとドアのカギをかけた所で、何ともだらしのないクシャミに気を取られた。振り向けば、隣の猫田がダラっとしたジャージ姿のまま鼻の下を擦っているのが目に入る。
猫田は、俺の隣の住人、つまり「002号室」の住人である。
小柄で小回りが利きそうだが、越してきてからこっちすばしっこさを見せたことはない。寧ろ、毎日毎日眠そうな目を擦り、その辺の小石にさえ蹴躓いてヨロヨロしている。
猫田は、いつも通りあくびに眠い目を擦りながら、寝癖が酷く付いた金髪も気にすることなく、カギ穴にカギをガチャガチャやっている。
俺は、そんな様子を思わずじっと見てしまっている。
バカバカしいとは思うものの、元来のお節介からなのか危なっかしくて目が離せないのだ。
猫田は、不器用である。
その上、常に寝ぼけているわけで、かぎ穴にカギを差し入れることさえ困難そうなのだ。
「・・・・・・、」
「あ」
猫田は終に諦めた様子で、カギもかけずにブラっと踵を返した。
瞬間、思わず口が開くと、ボヘラっとした顔の猫田がこちらを振り向いた。コンビニにでも出ようとしていたのか、手ぶらにサンダルをつっかけたラフすぎる格好だ。
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こんな感じでどうぞ。
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