アーシャは後悔していた。
ホランドは絶望していた。
ジェイは諦めていた。
3人が出会ったのは寂れたショットバーで、それぞれ顔見知りでもなく、ただ安酒を呷って、
一人は泣き、一人は押し黙り、一人は笑っていた。
「ぅ、ぅっ・・・・・・、」
女は、店に入ってきたその時から泣き続けている。鬱陶しくてしかたがない。
緩くパーマをあてた蜂蜜色の髪に、手首に光る細身のチェーン、少々安っぽいワンピース。
年よりも大分幼く見えるのは、その格好と泣き方の所為かもしれない。小さな女の子が、いかにも
泣きじゃくるといった泣き方なのだ。
安っぽい化粧にも関わらず、商売女というよりは、初めての化粧に失敗したティーンエイジャーに見える。
その顔に流れる涙を、アイシャドウもマスカラも構うことなくゴシゴシと拭っては泣く。
唯一、子供じゃない行為と言えば、その合間に酒を呷るということだけだ。
それにしても、顔はやつれている。
瞼は真っ赤でしょぼしょぼ、鼻先も真っ赤で、指先も荒れて真っ赤だ。生まれた時から何もかもが上手く
いかない、低所得者街の女の手本のような女だ。とは言え、こんな場所にくる人間なんて大抵がそんなものだ。
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