NOVEL  >>  Short Novel  >>  Short #001 〜 #005
2009/00/00 掲載
ジュニパー・ベリーを摘みに
 アーシャは後悔していた。
 ホランドは絶望していた。
 ジェイは諦めていた。

 3人が出会ったのは寂れたショットバーで、それぞれ顔見知りでもなく、ただ安酒を呷って、 一人は泣き、一人は押し黙り、一人は笑っていた。


「ぅ、ぅっ・・・・・・、」


 女は、店に入ってきたその時から泣き続けている。鬱陶しくてしかたがない。
 緩くパーマをあてた蜂蜜色の髪に、手首に光る細身のチェーン、少々安っぽいワンピース。 年よりも大分幼く見えるのは、その格好と泣き方の所為かもしれない。小さな女の子が、いかにも 泣きじゃくるといった泣き方なのだ。

 安っぽい化粧にも関わらず、商売女というよりは、初めての化粧に失敗したティーンエイジャーに見える。 その顔に流れる涙を、アイシャドウもマスカラも構うことなくゴシゴシと拭っては泣く。

 唯一、子供じゃない行為と言えば、その合間に酒を呷るということだけだ。

 それにしても、顔はやつれている。
 瞼は真っ赤でしょぼしょぼ、鼻先も真っ赤で、指先も荒れて真っ赤だ。生まれた時から何もかもが上手く いかない、低所得者街の女の手本のような女だ。とは言え、こんな場所にくる人間なんて大抵がそんなものだ。





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