NOVEL  >>  Short story  >>  short #01-#05
 思いがけない寂しさに動揺してしまう。
 手にしていたケータイの小ささに身の置き所がなく、冷たいそれをぎゅうっと握り締めた。

 距離はそれほど離れているでなく。
 けれども、その一駅離れた慣れた距離が物凄く遠く思えた。
3月と4月の間に
 出会いは、というか、そんな大した言い方も似合わない、格好の付かない出会い方だった。
 何を隠そうその時俺は、体育館裏のその場所で 泣いて いた。

 どうして泣いていたかは取り敢えず置いておいて、何より俺は、そんな所を誰にも見られたくなかった。中2にもなった男がメソメソ泣くなんて、やっぱりどこか格好が悪いものだ。

 だから隠れて泣いていたというのに、また間が悪いことに、そこへ煙草を吸いにやってきた連中がいたのだ。
 それが、本間を含めた4人だった。

 とんと、仲間とつるむ、なんて行為が好きじゃなかった俺は、この場所が「そういう場所」であることすら知らない上に、まさか中学生が煙草を吸いにくるとも思っていなかった。

 そりゃ、世の中学生が皆、清き正しく、煙草なんかとんでもない!と思っているわけではないが、何故か自分の中学では他所のこと、と思いこんでいたのだ。


「誰かいんじゃねぇ?」


 無神経そうな乱暴な声に、びくりと体が震えた。
 どこかに移動したかったが、ここを離れられない理由があったし、何よりここから移動するには、どうやっても向こうから来る連中と顔を突き合わせてしまう。ここは袋小路なのだ。

 取り敢えず袖口で無造作に涙を拭ったところで、投げ出したような不揃いな足音が複数近づいてきた。更に気も漫ろになりながらも、どうする考えも浮ばずに、ただ人の気配のする向こう側をじっと見ていた。有難いことに、この驚きのお陰で涙は自然と引っ込んでしまった。


「・・・・・・、」


 これはこれで助かったかもしれない。
 そう思いながら数度息を吐き出して落ち着き始めた時、ふざけ合うような声がして顔を上げた。


「・・・・・・」
「・・・・・・、」


 思わず見合う両者。

 最初に思ったのは、俺とは関係なさそうだ、ということだった。
 連中の格好は筆舌に尽くしがたく、かと言って珍しくもなく、どの時代にもある学生特有の着崩した制服姿だった。ただ、俺はそういう着方はしないだろう、というだけだ。


「え、誰? 何やってんの、」


 一番最初に口を開いたのは、髪がキンキラキンに染まっている奴だった。そいつの脇で、違う奴が「うわ、泣いてんじゃね?」と呟くのが聞こえ、カッと顔が火照るのを感じた。





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