手にしていたケータイの小ささに身の置き所がなく、冷たいそれをぎゅうっと握り締めた。
距離はそれほど離れているでなく。
けれども、その一駅離れた慣れた距離が物凄く遠く思えた。
3月と4月の間に
出会いは、というか、そんな大した言い方も似合わない、格好の付かない出会い方だった。何を隠そうその時俺は、体育館裏のその場所で 泣いて いた。
どうして泣いていたかは取り敢えず置いておいて、何より俺は、そんな所を誰にも見られたくなかった。中2にもなった男がメソメソ泣くなんて、やっぱりどこか格好が悪いものだ。
だから隠れて泣いていたというのに、また間が悪いことに、そこへ煙草を吸いにやってきた連中がいたのだ。
それが、本間を含めた4人だった。
とんと、仲間とつるむ、なんて行為が好きじゃなかった俺は、この場所が「そういう場所」であることすら知らない上に、まさか中学生が煙草を吸いにくるとも思っていなかった。
そりゃ、世の中学生が皆、清き正しく、煙草なんかとんでもない!と思っているわけではないが、何故か自分の中学では他所のこと、と思いこんでいたのだ。
「誰かいんじゃねぇ?」
無神経そうな乱暴な声に、びくりと体が震えた。
どこかに移動したかったが、ここを離れられない理由があったし、何よりここから移動するには、どうやっても向こうから来る連中と顔を突き合わせてしまう。ここは袋小路なのだ。
取り敢えず袖口で無造作に涙を拭ったところで、投げ出したような不揃いな足音が複数近づいてきた。更に気も漫ろになりながらも、どうする考えも浮ばずに、ただ人の気配のする向こう側をじっと見ていた。有難いことに、この驚きのお陰で涙は自然と引っ込んでしまった。
「・・・・・・、」
これはこれで助かったかもしれない。
そう思いながら数度息を吐き出して落ち着き始めた時、ふざけ合うような声がして顔を上げた。
「・・・・・・」
「・・・・・・、」
思わず見合う両者。
最初に思ったのは、俺とは関係なさそうだ、ということだった。
連中の格好は筆舌に尽くしがたく、かと言って珍しくもなく、どの時代にもある学生特有の着崩した制服姿だった。ただ、俺はそういう着方はしないだろう、というだけだ。
「え、誰? 何やってんの、」
一番最初に口を開いたのは、髪がキンキラキンに染まっている奴だった。そいつの脇で、違う奴が「うわ、泣いてんじゃね?」と呟くのが聞こえ、カッと顔が火照るのを感じた。
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